■ ホイールの軽さと剛性が走りを変える!
ホイールを換えることで、ロードバイクは走りがはっきり変わります。
完成車を手に入れたままのホイールで走っていたらぜひホイールのチューンナップにチャレンジすべきですね。
走りそのものをグレードアップできます。フレームと同じくらい重要な要素です。
ホイールにはロープロファイル、エアロ、40mmハイトのディープ、バトンホイールなどがあります。
加速性、登坂抵抗、スピードの継続性、横風の影響、空気抵抗の軽減、ショック吸収性など、特性が大きく違うので走りに合わせて選ぶ事になります。
クリンチャータイヤ、チューブレスタイヤ、チューブラータイヤの構造でも乗り心地が違いますが、ブランドやモデルによっても大きく乗り心地が変わります。
さらに言えば、同じタイヤでも、空気圧の設定でも転がり抵抗や、タイヤの変形によるパワーロス、グリップ力、ショック吸収性など、大きく乗り味が変わります。
ミシュランの提唱する低圧設定も興味のある話ですが
一般道では路面への接地力やショック吸収性が有効でも、スムーズな路面ではタイヤの変形によるロスが大きいと感じるはずです。
路面状況、ライダーの体重、前駆輪の重量配分、ダンシングを多用する走りか、など条件が変われば低圧設定が万能ではありません。
ユーザーがタイヤやバイクに求める性能が違うと、いずれの構造のタイヤでも6気圧から7気圧という、ロードタイヤとして、低圧設定だけではないと思います。
なぜなら、クリンチャータイヤの場合、必ずヨーロッパの荒れた路面で問題になるのがリム打ちパンクです。
それは比較的路面のいい日本ではあまり語られませんが、意外にタイムロスの大きいメカトラブルです。
しかも、先頭集団への復帰に大きなエネルギーを消費します。
できれば避けたいトラブルです。
200g前後のクリンチャータイヤの軽量モデルが登場していますが、チューブはリム打パンクを防止するために、ブチルゴムの70g〜80gくらいの肉厚のあるモデルを採用しているチームが多かったです。
23mmが主流だったタイヤですが、25mmや28mmタイヤを採用する理由の1つがリム打ちパンク対策です。
グリップ力の向上や転がり抵抗の軽減やショック吸収性だけがテーマではではありません。
タイヤの構造的にも、プロのロードレースのトップチームは、走行性能を追求して、クリンチャーからチューブラータイヤへ移行しました。
タイヤやリムの断面構造によるホイールの剛性の高さと軽さのバランス、ショック吸収性や路面への追従性によるグリップ力などを配慮してのトップチームの採用です。
ワールドワイドのサイクルビジネス的には、クリンチャータイヤが主流ですが、チューブレスレディタイヤも注目されます。
スポンサーの御意向によりチューブレスレディタイヤとホイール採用のチームも登場する可能性があります。
レースではパンクしてもサポートカーからホイールが供給されますから、いずれの構造のタイヤでも問題ないです。
一般ユーザーの場合はライド中のパンクへの対応のしやすさは、タイヤの構造選びに配慮すべきです。
チューブレスレディタイヤへの注入が必須という、パンク防止のシーラント剤のクリンチャータイヤやチューブレスタイヤへの採用は、シーラント剤の穴を塞ぐ能力を越えたパンクの時、現場で予備チューブ交換でのパンク修理になったときに作業へ影響するので、十分考えて、使うか使わないか判断したほうがいいと思います。
特にチューブレスタイヤの場合は、シーラント剤がどばっと出て来て、それを除去するのがかなり面倒な事になります。
チューブレスレディタイヤの場合は、注入が前提の設計なので、空気が抜けてしまった場合は面倒な作業になる事を覚悟した方がいいです。
とにかくロードバイクの要素の中で乗り味を左右するという意味では、前後のホイールやタイヤは、フレームと同じくらい、または、フレーム以上のショック吸収性、加速性能、スピードの維持のしやすさなど、ロードバイクの乗り味を決定する重要なファクターです。
駆動輪である後輪の縦横と駆動方向への剛性は、ライダーが発揮するパワーをロスなく伝える要素です。
バイクシューズのソール、ペダル、クランク、チェーンリング、チェーン、スプロケット、フリーボディ、ハブ、スポーク、リム、タイヤへと駆動トルクが伝わり、路面を押して前へ進めるために重要です。
ホイールに取り付けられた後輪タイヤの特性と、体重やパワーに見合ったタイヤの空気圧の設定も、もちろん重要です。
そしてリムやタイヤやチューブの、リム周辺重量が加速性能や、いったん上がったホイールの回転スピードを持続する慣性を左右します。
リム周辺重量が軽い方が加速は軽く、踏み出しの軽さとして感じます。最高速度への到達時間が短くなります。
ところがいまの運動を継続しようとする慣性力は小さいので、ホイールの特性として、クランクを踏み込まないと、高速を維持できる時間は短く、すぐに速度は低下してきます。
速度が落ちて来たなと感じて、もとに戻したいと、クランクを踏み込んでペダリングすると、加速のためのクランクの踏み味は軽く、リム周辺重量が軽いホイールは、すぐに速度を戻すことができます。
ボーラ35などの340gくらいのカーボンリムに、ハイテンションのストレートスポークで組んだ剛性のあるホイールに、アマンダスポーツやヴィットリアの180gから220gのチューブラータイヤが、ヒルクライム用や、サーキットエンデューロの実用範囲の軽量ホイールでしょう。
空気圧設定は体重にもよりますが、70kgで転がり抵抗を考えるとスムーズな路面では8気圧から9気圧くらいです。
アラヤに超軽量の台形断面のカーボンリムがありました。
カーボンのみのモデルと、ケブラー繊維がカーボン繊維に混紡されて編み上げられて成型されたものがありました。
基本はピスト競技用に設計されていましたが、少量生産でリムサイドを強化したロード用もありました。
生産段階での重量のばらつきがあり、1本1本に白いマジックで重量が記入されていました。
5本ぐらい手に入れて、ホール数は32穴、もっとも軽いのが235gでした、これは前輪に使いました。
重いものが260gでこれは後輪に使いました。
前後輪とも14番と15番のダブルバテッドスポークで、6本のタンジェント組みで組み上げました。
リム周辺重量は前輪235gのクレメン・カンピョニシモ・セタエキストラに235gのリム。後輪もカンピョニシモで、リムが260gでした。
軽量なホイールに交換したのに、期待通りに走りが軽くないのです。
実はこのホイールを組んでいる段階でその予感はありました。
リム単体の真円度や断面形状の精度は問題なしでした。
まずは32本のスポークをアルミニップルで止めて。
一定回数ニップルを締め込んで仮組みの段階で、軽量なカーボンリムが左右に振れ始めました。
予想以上にリムの剛性が低いようです。
縦方向と横方向の振れ取りが始まって、ニップルを2分の1回転ずつ回すようになって、やっと左右の振れや縦振れが落ちついてきました。
前輪は左右均等な張りなのでぎりぎりまでテンションを上げる方向性で締め込みました。
それでも400gクラスのアルミリムのスポークテンションに上げられません。
300gを切っているアルミリムのスポークテンションと同じかそれ以下でした。
300gのアルミリムを32本スポークで組んだホイールは、クリテリウムでもがいただけで、リムが変形したり、変形量が大きくニップルの緩みが発生して、すぐにふらふらになる強度しかありません。
このスポークテンションでは、ホイールとしては軽くできても、ホイールの剛性が出ないし、振れが出やすいと思いました。
リムは軽いんだけどな〜。
ゆっくりLSD レベルで走っていると踏み出しは軽いのですが、加速時や上りセクションでは、クランクを踏み込んだ時に後輪がフニャフニャでパワーロスしている感じでした。
前輪の縦横の剛性を計測してみると、ハイペロンと比較すると縦も横も70%くらいの剛性でした。
後輪の場合はハイペロンの60%程度でした。
これは明らかにホイールの剛性不足です。
体重の軽いライダー、ペダリングのトルクの抜けが少ない、コントロールができているライダーでないと、剛性不足によるパワーの伝わなさをはっきり感じるホイールです。
平地でも上りでも、気持ち良く加速してくれないホイールです。
諦めきれずにしばらく使っていましたが、裏不動の下り坂で落ちていた農業用のビニールに乗り上げて後輪が横方向へスリップして、タイヤがアスファルト路面に戻って、タイヤのグリップが発生した瞬間にリムがへし折れてしまいました。
前輪はどこまでスポークテンションを上げられるか試してみましたが、カーボンリム側のニップルホールが出っ張ってきて、すぐに限界がやってきました。
リムが丈夫で剛性がないとスポークのテンションを上げてホイールの剛性を高めることはできません。
300g前後のカーボンリムホイールは取り扱いがデリケートになりますし、300gを切ったカーボンリムはオールラウンドを求められるシーンでは、剛性不足でパワーロスします。
カーボンを上廻る剛性を発揮する新素材がリムへ採用されない限り、スポークのテンションも上げられないし
300g以下のリムで剛性のある、レースで使える進むホイールの実現はいまのところ難しく、
パワーがあればボーラ50mm、オールラウンドやヒルクライムならハイペロンかボーラ35がいい感じです。
ではでは。