鈴木でございます。
サイクルイベント、そしてトライアスロンイベントは中止、延期が続いております。
アスリートの皆さんは練習環境の変化、いつものような練習できずにストレスが溜まったり
実際にイベントや大会が始まった時にパフォーマンスが発揮できるか?
そんな懸念を抱きながら日々過ごしていることかと思います。
北浦和店は埼玉県トライアスロン連合の事務局としても活動しておりJTU(日本トライアスロン協会)より有益な情報が届きました。
内容は現在の状況下どのように、練習や行動すべきか、JTU(日本トライアスロン協会)のメディカル委員会が中心となり要点をおさえた情報が届きましたのシェアさせていただきます。
この中には、最近言われているランニング中の10m バイクの20mのソーシャルディスタンスの間隔について根拠が乏しいとも指摘してあります。
やや長文はありますが、周囲に誤解を招くことを防ぐ意味でもアスリートの皆様が理解することが大事かと存じます。
ぜひ一読の程おねがいします。
新型コロナウイルス感染症拡大防止のために緊急事態宣言が出され、不要不急の外出自粛が求められる中、皆様におかれましてはそれぞれの立場でこの難局に対峙されておられることと存じます。
このたび緊急事態宣言が5月31日まで延長されることが発表され、外出自粛が長期間になることが明らかになりました。一方では、緊急事態宣言解除地域が発表される予定もありますが、慎重に緩むことの無い自粛解除対応が必要とされています。
引き続き、日本国政府発令の緊急事態宣言と各地方自治体の自粛内容に準じた活動を行うことをトライアスロン・ファミリーの皆様にお願いして行く方針ですが、Triathlon Japan/公益社団法人日本トライアスロン連合(JTU)では、この期間にトライアスリートにとっての有用な情報をJTUメディカル委員会が中心となってまとめましたので、皆様が練習や行動を再開する際の参考に本日御案内させて頂きます。
<内容の要点>
1.屋外運動は、外出自粛下においても非感染性疾患の発症及び悪化を防ぐために許容されます。
2.屋外運動は、人の多いところは避けて、他人と2m以上の距離を保ち、自他の感染予防ならびに安全のための種々の対策を行い、周囲への配慮も行うことが推奨されます。
3.ランニング時約10mソーシャルディスタンス説は根拠が不十分です。
4.屋外でのマスク着用は、他人との距離が確保できない場合には考慮されます。マスク着用よりも他人と2m距離をあけることを大切にしてください。
<本文>
緊急事態宣言が出され外出自粛が要請されている中ではStay Home、すなわち自宅に留まることが大切で、工夫を凝らして屋内練習に取り組まれていると思いますが、一方で必要最低限の屋外運動は公的機関が容認しています(※1、2、3、4参照)。
この理由は、屋内に長期間留まることが、身体活動量低下から生活習慣病など非感染性疾患の発症及び悪化、メンタルストレス、高齢者では認知機能低下やフレイルと呼ばれる運動機能低下に繋がり、新型コロナウイルス感染症に罹らなくても別の疾患で健康に悪影響を及ぼすだけでなく、医療を圧迫し医療崩壊に繋がるからです。
この感染症が終息するためには、治療薬やワクチンの開発または集団免疫の獲得が必要であり、それには長期間が必要であることは複数の専門家が指摘しています。従って、この長期戦を乗り越えるためには、先に示した身体不活動に伴う非感染性リスクを少なくする必要があり、そのためにも屋外運動は可能な範囲で行うことが推奨されます。
この屋外運動の際に留意すべきポイントは、スポーツ関連学会、競技連盟の情報が有用です(※5、6、7、8、9)。特にランニング学会の情報は、現在の国内の様々な事情に配慮した提言です。
○ランニング学会「外出自粛要請時のランニング愛好者の皆様へのお願い」から要点紹介。
ランニングを行う場合には、以下のような点に十分留意して、感染拡大防止に努めてください。
- 発熱や咳のある場合はもちろん、体調に不安のある方は外出をしないでください。
- 走る前に手を洗いましょう。
- 密集・密接をつくらないよう、一人で走りましょう。
- ランニング中も感染拡大防止の対策を取りましょう。
- エチケットとして、マスクまたはフェイスガード等の着用をお勧めします。
- ランニングが体調不良やケガの原因にならないようにしましょう。
- ランニングを終えて帰宅したら手洗い、うがいを行いましょう。また、十分に睡眠をとりましょう。
自転車も基本的な考え方は同じですが、サングラス着用を推奨します。単独走行は事故発生時のリスク管理には不向きなので、十分に注意してください。家族もしくは同居人との走行は許容できますが、間隔は十分にあけてください。また途中で感染拡大に繋がる行動はしないでください(例:ツバは吐かない、鼻をかんだティッシュは持ち帰るなど)。
ところで最近、海外の報告(※10)を引用し、ランニングは約10m、自転車は約20mの距離をあける必要があるというコメントが散見されます。この情報が拡散し始めた頃から、口を覆わずに走るランナーを非難する雰囲気が見られるようになってきました。しかしここで注意してほしいのは、この報告は第三者の評価を受けていないこと、流体力学の観点だけであり細菌・ウイルス学や免疫学の観点ではないこと、拡散方向は真後ろのスリップストリームだけであること、屋外の自然環境における報告ではないことなど様々な観点から、そのまま数字を受け止めるのは無理があるということです。この結果に対して、国内外で複数の懐疑的な意見が出されています(※11、12、13、14、15)。
この報告を紹介された山中伸弥先生も、ご自身のブログで以下の様に更新されています(※16)。「休日の皇居や大阪城など、多数のランナーや散歩をされる方が集中する場所を念頭に置いて提案しています。人がまばらな時のジョギングや、グランドでの屋外スポーツに関する提案ではありません。紹介している報告は、さらなる科学的検証が必要です。しかし、周囲にたくさん散歩の方がおられる時は、エチケットとしてマスク等を着用することにより、お互いに気持ち良い時間を過ごすことが出来ると思います。」
つまり大切なことは、感染予防のためには人が多い場所と時間を避けて運動するということと、周囲への配慮を忘れないでほしいということです。10mという数字は根拠に乏しいです。
そもそも飛沫感染は2m離れると感染しない、オープンエアでは2mまで到達する前に種々の大きさのエアロゾルは乾燥して飛沫核となり、多くのウイルスは感染性を失うと、アビガンを開発した臨床ウイルス学者の白木公康先生が述べられています(※17)。屋外で風が吹いて乾燥すれば感染性を失いやすいと考えるのが妥当です。
マスクの必要性については、マスクが自らの感染を予防できるという科学的根拠は今のところ有りません(※18、19)。CDC(米国疾病予防管理センター)が方針転換しマスク装着を推奨していますが、これは流行地域において特に社会的距離を維持できない公共の場(食料品店や薬局など)で、他人に感染させないようにマスク装着を勧めているものです(※20)。外科用マスクで自らのコロナウイルス含有エアロゾル拡散を防ぐことは可能なようです(※21)。5月4日の専門家会議提言におけるマスク着用も、外出中の屋内にいるときや会話をするときです(※22)。いずれにしても、マスクよりもまずは他人から2m離れることに留意してください。
ただし運動時のマスク装着の意義は、医学的な面だけではありません。連日のメディア報道や常に危機感を持って生活していると精神的ストレスが蓄積します。さらに、一生懸命に感染防止のためにマスク装着を続けていると、いつの間にかこれが習慣となり、これに反する他人の行動を非難したくなる可能性があります。これが、皆が外出自粛をしている中をマスク無しで運動すると、周囲の方々への配慮が足りないと嫌悪感を与える理由です。マスクに限らず、いつも他人への思いやりを持って練習することが大切です。
周囲に人が居なければ、マスクを外して走ることも許容されます。これは、これから暑くなり熱中症のリスクが高くなることからも大切なポイントです。
なお、水泳に関しては現時点で水中における練習の指針を示したものはありません。FINA(国際水泳連盟)も陸上練習に言及しているのみです(※23)。引き続き情報収集に努めますので、今はできることに取り組んでください。
3種目に共通して言えることは、練習を自宅外で行う際には、まずその地域もしくは施設の方針やルールに従うこと、次に感染拡大を防ぐためにも自宅もしくは生活圏から遠方へ出かけないこと、最後に周囲の方々への気遣いを忘れないことです。
いずれにしても現在はStay Homeを原則としてください。
今は政府が緊急事態宣言を発した状況下ですので、4月8日に皆様にお願いした内容に今一度留意して、日々の練習そして健康管理に努めてください。
1)可能な限り自宅で過ごし、やむを得ない外出時は三密(密閉・密集・密接)を避け、ソーシャルディスタンスを保った生活をすること。
2)十分な睡眠、食事と適度な運動で健康を保つこと。
3)手洗い、マスク着用や咳エチケットを守ること。を励行することをお願いします。
以上のことは、本掲載日における総合的な見解です。今後、様々な状況や新たな分析があり得ます。そのため、社会情勢の変化に留意し行動することをお願いします。
皆様の健康と安全を祈り、一日も早い新型コロナウイルス感染拡大の終息を願っています。
2020年(令和2年)5月12日
公益社団法人日本トライアスロン連合(JTU)
会長 岩城光英
<参考資料>
※1.厚生労働省 2020/4/22 「人との接触を8割減らす、10のポイント」を公表しました
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00116.html
※2.スポーツ庁 2020/4/27 新型コロナウイルス感染対策 スポーツ・運動の留意点と、運動事例について
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop05/jsa_00010.html
※3.WHO(世界保健機関) 2020/3/27 Be Active during COVID-19
https://www.who.int/news-room/q-a-detail/be-active-during-covid-19
※4.CDC(米国疾病予防管理センター) 2020/4/10更新 Visiting Parks and Recreational Facilities
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/daily-life-coping/visitors.html
※5.ランニング学会 2020/4/29更新 外出自粛要請時のランニング愛好者の皆様へのお願い
https://e-running.net/0350topics_no19.html
※6.ACSM(アメリカスポーツ医学会)2020/3/16 Staying Physically Active During the COVID-19 Pandemic
※7.ACSM(アメリカスポーツ医学会)2020/4/8更新 Exercise is Medicine
https://www.exerciseismedicine.org/support_page.php/stories/?b=892
※8.KNWU(オランダ自転車競技連盟)2020/3/24 KAN IK GEZIEN HET CORONAVIRUS NOG BUITEN FIETSEN? (コロナウイルスを考えても、私はまだ外でサイクリングできますか?)
https://www.knwu.nl/magazine/kan-ik-gezien-het-coronavirus-nog-buiten-fietsen
※9.全日本実業団自転車競技連盟 2020/4/20 新型コロナウィルス感染拡大状況下における自転車活動について
https://www.jbcf.or.jp/information/150
※10.B. Blocken, F. Malizia, T. van Druenen, T. Marchal. Towards aerodynamically equivalent COVID19 1.5 m social distancing for walking and running.
http://www.urbanphysics.net/Social%20Distancing%20v20_White_Paper.pdf
※11.The Viral ‘Study’ About Runners Spreading Coronavirus Is Not Actually a Study
※12.ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(31) 2020/4/14(和訳)
https://note.com/terraauri/n/n205009e685bd?magazine_key=ma68cb17ea88e
※13.Are Running or Cycling Actually Risks for Spreading Covid-19? 2020/4/14
https://www.wired.com/story/are-running-or-cycling-actually-risks-for-spreading-covid-19/
※14.ジョギングも「2メートル」「マスク」で周囲への配慮必要 2020/4/27
※15.感染を予防する(かもしれない)素敵なBuffの使い方 2020/5/3
※16.山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信 2020/5/01更新 ジョギングエチケットに加筆しました。(下記参照)
※17.緊急寄稿(1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス学的特徴と感染様式の考察(白木公康) 2020/3/21
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14278
※18.MacIntyre CR, Chughtai AA. Facemasks for the prevention of infection in healthcare and community settings. BMJ. 2015 Apr 9;350:h694. doi: 10.1136/bmj.h694. Review.
https://www.bmj.com/content/350/bmj.h694.long
※19.National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine. 2020. Rapid Expert Consultation on the Effectiveness of Fabric Masks for the COVID-19 Pandemic (April 8, 2020). Washington, DC: The National Academies Press.
※20.Use of Cloth Face Coverings to Help Slow the Spread of COVID-19 2020/4/13
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/prevent-getting-sick/diy-cloth-face-coverings.html
※21.Leung N H L, et al. Respiratory virus shedding in exhaled breath and efficacy of face masks. Nature Medicine, 03 April 2020.
https://www.nature.com/articles/s41591-020-0843-2?ContensisTextOnly=true
※22.新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年 5 月 4 日)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000627553.pdf
※23.FINA(国際水泳連盟)COVID-19 ADVISORY: RECOMMENDATIONS AND PREVENTION
https://www.fina.org/content/covid-19-advisory-recommendations-and-prevention