ホイールビルドのカガク-03

ホイールビルドのカガク3回目です。

今回は「わずかな違いがとても大事」について

結論を先に書くと、「角度がわずかに変わることが大事」ということになります。

では、
前回の図に一部修正を入れて必要なことばを書き足していきます。

まず左フランジから。

まず「ラージ・スモール」を「ハイ・ロー」に統一しました。

IMG_3539

↑こちらはミドル・ローの左フランジの図です。
ミドルフランジの3クロス(6本取り)タンジェント組を「M3x」と書きます。
ローフランジの3クロス タンジェント組を「L3x」と書きます。

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専門用語についてちょっと補足します。

・ラジアル組
↓このようにハブ(中心の黒い軸受)から放射状にスポーク(銀色の針金)が並ぶホイールの組み方。
リムブレーキのフロントでよく見られます。横剛性が高くなります。

IMG_3541

・タンジェント組
↓このようにハブから接線方向にスポークが並ぶホイールの組み方。
リムブレーキのリア、ディスクブレーキのフロント&リアでよく使われます。駆動剛性が高くなります。

IMG_3540

・3クロス(6本取)

IMG_3540+

↑スポークの交点の数を「〜クロス」と呼びます。
交点を○で囲みました。この場合3か所交点があるので「3クロス」となります。
また、「6本取」も同じスポークの並びを意味していて、交差した(綾取りした)スポーク同士がハブフランジ上で何個となりのスポークホールから出ているか?…という視点から決めている言葉です。
ちなみにラジアル組の場合は、0クロス、0交差と呼ぶことにします。(ホイール組トークで世間的には通じない可能性がありますのでご注意を)

補足終了

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では、話を本題に戻します。

IMG_3538

↑こちらは右フランジの図です。ハイ・ミドルのそれぞれのスポークにさっきと同じきまりで名前を付けます。
ハイフランジの3クロスと2クロス、ミドルフランジの3クロスと0クロス(ラジアル)の話をしていきます。

そして、ハイ・ローハブを縦(うしろ)方向からみた図です。

IMG_3537

ここでは、ハイフランジしかないのでH3xとH2xのスポークのみとなります。
また、ホイールの中心線と右スポーク(赤)の角度をブレースアングル右(以下BA右)、左スポーク(青)の角度をブレースアングル左(以下BA左)と呼びます。

では用語の準備はできましたー!
説明いきますよー!

IMG_3542

ミドルフランジとハイ・ローフランジのハブに赤の点線で補助線を引きます。
これは、M0xのスポークホールとH2xのフランジホールの位置(ハブ中心からの高さ)を意識するためのものですが、現実に「同じ高さ」に並ぶわけではないのでご注意ください。

まず、M0xとM3xの「わずかな違い」ですが、フランジの横からの図を見て下さい。

M0xのスポークとM3xのスポークは、長さ・ハブフランジに対する角度がかわっていることがお分かり頂けると思います。
M3xはハブの中心〜スポークホール〜リムの角度がおよそ90°になります。それに対してM0xのホイールはその角度は180°となります。
まず、この角度の「違い」があります。180°に近いほど横剛性が上がり、90°に近いほど駆動剛性が上がる、ととらえて下さい。

次に、ハブを縦(うしろ)から見た図を見て下さい。

ミドルフランジのハブでM0xのスポーク、ハイフランジのハブでH2xのスポークを見て下さい。
これらは「この図では」同じ赤点線上にあります。ここで、M3xとM0x、H2xとH3xのスポークのBA右をみていくと…。

M3x<H3x<M0x≦H2x(←16/11/13訂正)

…とBAが「わずかに」大きくなります。

このBAの「わずかな違い」がホイールビルドにおいて大きな差を生み出します。

 
-加筆開始- 16/11/13

M0xとH2xのスポークのBA右が、M3xやH3xのそれより「わずかに」でも大きくなること。
このBA右の増加は、2つの利点をもっています。それについては別記事にします。

-加筆終了-

気づいた方もいらっしゃると思いますが、キシリウムのイソパルスは、BA右がそのフランジ寸法に対して最大化する組み方なのですね。

BA右は、リアのスプロケットの段数が9,10→11段となった際にガッツリ減ってしまいまして、11段ハブのハンドビルドホイールを組むときにホイールビルダーは相当難儀しました。
というのも、BA右が小さくなると右スポークのテンションをあげても、左スポークのテンションが上げられないので、ゆるゆるグダグダなホイールになってしまうのです。

イソパルスは、ストレートスポークを使ってBA右を最大化することで、ゆるゆるグダグダなホイールにならないように工夫しているのです。
(イソパルスについてはきっと長くなるので別記事とします)

以上、「BA右がわずかに大きくなることが大事」というお話でした。

つづきはこちら ホイールビルドのカガク4回目 

-脱線開始-

今、↑でサラッとストレートスポークでと書きましたが、これはスポークが途中で曲がっていないスポークのことです。曲がっているスポークはベンドスポークといい、上の写真に使われているスポークがそれにあたります。ハブのところで90°位まがっていますよね?
現実にベンドスポークを右スポークにして(M)0xでホイールを組むと、今回の図のようなベンドスポークの場合、私の経験上ですが 遅かれ早かれスポークが破断します。スポークホールのとこですね。駆動トルクに負けてチギれてしまします。
もしくは、リアディレイラー(以下RD)とスポークが接触してホイールに巻き込まれて、いろいろ壊れてフレームごと壊れたり、ライダーが落車して大けがしたり、それでは済まなかったり、ともかく大惨事になることがありますので、ベンドスポークで右スポークのラジアル組は特にやめたほうが良いです。

-脱線終了-

今回も長文にお付き合いくださいましてありがとうございます。

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